この本の最初のテーマは宗教法人課税です。宗教法人に対しては、収益事業を除き非課税とされています。
この本で取り上げられた話題の中で興味深かったのが、最近流行りのペット葬祭が収益事業とされたことです。
ペット事業も民間企業がやれば当然収益事業ですが、寺院がやった場合、判断が難しいところだと思います。裁判で寺院が行うペット葬祭事業が収益事業だとされた事例では、その理由が、「料金表」をインターネットで公表していたことだとされています。つまり、「対価」があらかじめ決められているため収益事業であり、判決文ではペット供養の納骨を「倉庫業」、ペット供養の法要は「請負業」だとしているそうです。
そこで著者は、非課税にするなら料金を決めずに、あくまでも「お気持ち」から拠出して頂いたものでなければならない、と指摘しています。宗教法人が戒名等の料金を明確にしない理由もここにあるようです。
法事等でお坊さんにいくら渡すか悩むことがありますが、その背景にはこうしたことがあるのだと初めて知りました。
次に取り上げているのが政治団体と税についてです。
国会議員の場合、歳費約2,200万円の他に非課税の文書通信交通滞在費1,200万円、公設秘書への公費約2,700万円、立法事務費780万円に政党交付金が1人あたり約4,000万円付与され、これらをあわせると、総額は約1億円程度になるといいます。
しかもこのうち個人の所得として課税されるのは歳費の部分だけです。所得税の対象にならない収入がたくさんあるだけでも、政治家は恵まれていると言えますが、さらにすごいのが、政治団体を承継することによる事実上の事業承継です。
事業を子に承継すれば相続税がかかりますが、政治団体を利用することで、相続税の負担なく、親から子へ政治家業を承継することができます。
そこで著者は、皮肉を込めてこう言っています。
パナマ文書には、日本の政治家の名前が出てこない理由がおわかりいただけたでしょうか。そう、政治家にとっては、日本がパナマより遥かに安全で確実な租税回避地なのです。(p47)
このほかにも、暴力団に課税できるか?とか、シングルマザーの弁護士のベビーシッター代は経費になるか?など、面白い話を真面目に論じていますし、この本を読めば、交際費課税や印紙税が、理論的に考えていかに理不尽なものかもよくわかります。
税金は身近な問題で関心も高い一方で、複雑でわかりにくいことが多々ありますが、この本はとても読みやすく、またきちんと根拠を示して論じているので、大変勉強になりました。