ホテルREITの中には月次でポートフォリオの客室単価、客室稼働率、RevPARを開示している法人がいくつかありますが、その中で本日3法人が2020年3月度の数字を発表しました。
大江戸温泉リート投資法人(3472)
大江戸温泉リートのポートフォリオは温泉旅館や観光ホテルで構成されています。そういう点ではかなり特殊なホテルREITです。
2020年3月期は客室稼働率が前年同月比▲32.9%、客室単価(ADR)は前年同月比▲25.0%、RevPAR(客室稼働率×客室単価)は前年同月比▲49.7%、売上高は前年同月比▲50.8%でした。
売上高は半減していますが、この後紹介する他のホテルREITよりはマシな数字です。もともと大江戸温泉はインバウンドの割合が低かったので、外国人の入国制限の影響は受けにくかったのかもしれません。
それにしても、3月に入って大型イベントの自粛や延期、レジャー施設の休館などがあって既にかなり自粛ムードがあったと思いますが、意外と健闘した結果だったように思います。(それが良いことかどうかは別ですが)
インヴィンシブル投資法人(8963)
インヴィンシブル投資法人は国内ホテルの他にも海外ホテルやレジも保有していますが、国内75物件での比較をすると、客室稼働率は前年同月比▲50.4%、ADRは前年同月比▲34.9%、RevPARは前年同月比▲67.7%、売上高は前年同月比▲67.3%でした。
*国内ホテル75物件
売上高は約7割のダウンという厳しい結果でした。当法人のホテルポートフォリオは、タイプ別では宿泊特化の割合が比較的高いもののフルサービスやリゾートもあり、バランスが良いのが特徴です。
【タイプ別ポートフォリオ】
出典:当法人2019年12月期決算説明会資料
訪日外国人客数が前年同月比▲93.0%と激減し、国内もすでに自粛モードに入っていましたので、どのタイプでも需要の大幅な減少は避けられなかったようです。
また、本日のリリースの中で、4月度のRevPARは前年同月比で▲80%程度になると見込んでいます。
ここまでは想定の範囲内でしたが、同日発表された運用状況及び分配金の予想で、2020年6月期、2020年12月期について、運用状況、分配金とも予想を取り下げ未定としました。
出典:当法人リリース資料
2月に発表した決算説明会資料では、内部留保を活用し2027年に至るまで少なくとも3,400円の年間DPUを維持するとしていましたので、株価へのインパクトはかなりあると思います。
ジャパン・ホテル・リート投資法人(8985)
ジャパン・ホテル・リートは変動賃料等導入20ホテルで比較すると、客室稼働率は前年同月比▲65.8%、ADRは前年同月比▲14.6%、RevPARは前年同月比▲70.8%、売上高は前年同月比▲67.8%でした。
当法人は3月25日に発表した2020年12月期の運用状況及び分配金の予想の修正の中で、3月度のRevPARが前年同月比70%弱減少する可能性があると説明していましたので、概ね予想通りだったと言えます。
当法人のポートフォリオの構成は、ホテルタイプではフルサービスの割合が高く、グレードはラグジュアリーとアッパーミドルで過半を占めています。つまりインヴィンシブルと比べて少しグレードの高いポートフォリオになっていると言えます。
そうした特徴から、稼働率を下げながらも単価をある程度維持していたと考えられますが、結果的にはRevPARではインヴィンシブルと同じような結果になっています。
出典:当法人2019年12月期決算説明会資料
当法人はすでに3月25日に運用状況及び分配金の予想の修正を発表し、予想を取り下げて未定としていました。そういう点でもサプライズはなかったと言えます。
むすび
3月は訪日外国人数の激減やイベントの中止、レジャー施設の閉鎖、移動の自粛など、新型コロナウイルスの影響が本格化した月です。インヴィンシブルやジャパン・ホテル・リートのポートフォリオから、一般的なホテルの売上は概ね前年同月比70%減と言え、4月に至っては緊急事態宣言でさらに人の移動が制限され、インヴィンシブルのリリース資料にもあるよう、前年同月比80%減が一般的なところだと考えられます。
常識的に考えて、この時期にホテルへ宿泊しようとする人は、海外から帰国した2週間の待機者や体調が悪くて自己隔離した人、医療従事者などのコロナ関連需要か、テレワークプランのようなデイユースくらいしかないでしょう。
ただ、4月の80%減がボトムにはなると思いますので、あとはいつ緊急事態宣言が解除され、経済活動が正常に戻っていくかですが、こればかりは予想はできません。
僕はホテルREITを3月の暴落時にかなり買い増しましたが、今年の分配金は捨てるつもりで、新型コロナ終息後の回復に期待しています。
株価の方は今後も様々な思惑からボラティリティは高くなると思いますが、短期的な株価の変動に惑わされず、不動産の価値を見ながら冷静に対応したいと思います。