三菱商事(8058)の2020年3月期決算が本日(5/8)発表されました。
損益の概要
総合商社が軒並み厳しい決算を発表する中注目を集めた当社の2020年3月期決算ですが、収益は前期比▲8.2%、親会社の所有者に帰属する当期利益が前期比▲9.4%と減収減益となりましたが、意外と小幅な減少にとどまったというのが率直な感想です。
出典:当社決算短信
当社は2019年11月6日に発表された2020年3月期第2四半期決算で、当期利益の予想を6,000億円から5,200億円に下方修正していましたが、新型コロナウイルスの影響が懸念される中で、その予想を超えて着地したことは、評価できることではないでしょうか。
ただ、2021年3月期の業績予想については、「新型コロナウイルス等の影響等により事業環境の見通しが不透明であり、現時点でその影響額を適正かつ合理的に算定することは困難である」として未定としています。
当社の決算説明資料「2019年度決算及び2020年度業績見通し」の中で、新型コロナウイルス感染症による当社事業への影響と見通しについて言及されていますが、いずれも定性的な記述のみで、定量的な記述はありませんでした。
出典:当社決算説明資料
配当金
当社は2019年11月6日に業績予想は下方修正した一方、配当予想の上方修正を発表していましたが、当期利益が業績予想を超えていますので、配当も予想通り支払われることになります。
さらに、2021年3月期について、業績予想を未定としながらも、配当金は当期の132円から134円へ2円の増配を発表しました。
当社は累進配当を宣言していましたが、先行きが不透明な中で増配を発表したことは、累進配当に対する当社の強いコミットを改めて示したと言えるでしょう。
出典:当社決算短信
セグメント別の状況
連結純利益は5,907億円から5,354億円へ553億円の減益となりましたが、セグメント別の内訳は次のようになっています。
出典:当社決算説明資料
10あるセグメントのうち増益だったのは4つのセグメントでした。増益額が大きいセグメントは、産業インフラ(+818億円)、食品産業(+433億円)、電力ソリューション(+184億円)でした。産業インフラは前期計上した千代田化工建設関連の一過性損失の反動、食品産業も前期計上した減損損失の反動や一過性利益の計上で大きく増益となっています。
減益額の大きいセグメントは、自動車・モビリティ(▲776億円)、石油・化学(▲478億円)、金属資源(▲402億円)などでした。自動車・モビリティは、三菱自動車の減損損失や持分法投資先等の持分利益の減少、石油・化学はトレーディング会社におけるデリバティブ取引関連の損失や石油化学事業における持分利益の減少などによって大きな減益となっています。
株価の状況
コロナショック前までは2,900円前後で推移していた株価は、コロナショックで一時2,100円を割り込んでいましたが、そこから緩やかな回復基調にあります(見ようによっては横ばいにも見えますが)。
【6カ月チャート】
本日14時に決算が発表されたことで、株価がすぐに反応し、本日の終値は2,341.5円となりました。
2021年3月期の予想年間配当金は134円なので、配当利回りは5.72%です。
【1日チャート】
むすび
昨年11月の第2四半期決算の発表で、当期利益予想を下方修正したにもかかわらず、配当予想を上方修正したことで、累進配当に対するコミットが相当強いと感じていましたので、減配はないとは思っていましたが、来期の増配はサプライズでした。
しかも当期利益について、前期比では減益となったものの、業績予想を上回って着地したことは、高く評価できると思います。
現時点では新型コロナウイルスの影響を合理的に織り込むことができず、業績予想は未定としながらも増配を発表したことから、業績の先行きに自信があるのではと期待してしまいます。
総合商社株は資源市況の影響を強く受けやすく、業績のボラティリティが高いイメージがありますが、安定的かつ着実に配当金を増やしてくれる当社は、安心して長期保有できる銘柄だと思います。
なお、この記事はあくまで僕の個人的な見解を示したものなので、投資判断はくれぐれも自己責任でお願いします。