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三井住友がトップ!? 3メガバンク2020年3月期決算比較

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3メガバンクグループの2020年3月期決算が5月15日に発表されました。日経新聞では3メガ体制になって初めて三井住友フィナンシャルグループ(8316)が純利益で首位に躍り出たという記事が出ていましたが、その中身について詳しく見てみたいと思います。

 

連結損益の比較

三菱UFJファインシャルグループ(MUFG)、三井住友フィナンシャルグループSMFG)、みずほフィナンシャルグループ(みずほFG)の3メガバンクの2020年3月期の連結損益を比べると次のようになります。

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 このように見ると、確かに純利益ではSMFGがトップとなっています。MUFGが大幅な減益となった主な要因は、東南アジアの銀行子会社であるバンクダナモンの減損処理2,074億円やアユタヤ銀行の減損処理1,305億円ほか保有する株式の減損処理650億円などの影響によるものです。

また、みずほFGが大幅な増益となった主な要因は、2019年3月期決算で固定資産の減損損失5,007億円や外債等の有価証券ポートフォリオの再構築に伴う損失1,947億円を計上したことの反動です。

銀行の実質的な収益力を表す連結粗利益ではMUFGが他を圧倒していますし、実質的な利益を表す連結業務純益でもMUFGがトップです。SMFGの強みは昔から経費率の低さで、経費率の低さでは他を圧倒しています。

メガバンクとは言われていますが、こうして並べて比較して見るとみずほFGが大きく出遅れていることがわかります。連結粗利益でMUFGの半分程度しかないというのはあまりにも寂しいことです。1999年12月に当時の日本興業銀行、富士銀行、第一勧業銀行が経営統合を発表した時は、日本で圧倒的な力を持つ銀行が誕生したと思ったものですが、それから約20年間という長い歳月が内部闘争で無駄に過ぎてしまったのではないかと思ってしまいます。

純利益は特殊要因によって大きく変動することがあるので、特に銀行の業績の比較ではあまり意味はなく、業務粗利や業務純益の方が実態を表すと思いますので、収益力では実質的にはMUFGがトップだと言えます。

 

 

 

 

 

収益構造の比較

メガバンクグループの収益構造を見ていく前に、まずぞれぞれのグループの中核銀行である三菱UFJ銀行三井住友銀行みずほ銀行の単体の損益を比較してみます。

中核銀行単体の損益を比較すると、業務粗利は三菱UFJ銀行がトップですが、経費率の差が連結よりも大きく、実質業務純益では三井住友銀行がトップで、次がみずほ銀行となっています。

ここで特徴的なのは業務粗利の連単倍率、つまり単体の業務粗利に対する連結業務粗利の比率を比較すると、MUFGが2.58倍と他のグループよりかなり高くなっている点です。これは、伝統的な銀行業務以外の業務による収益の貢献が大きいことを表していると言えます。

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子会社の収益について統一したフォームでは開示されていないので単純な比較は難しいですが、MUFGについては親会社株主純利益の内訳として次のような資料が開示されています。

この図を見ると銀行本体以外にも、三菱UFJモルガンスタンレー証券や三菱UFJ信託銀行、米州MUFGホールディングス(MUAH)、アユタヤ銀行(KS)、三菱UFJニコスなど純利益への貢献の大きいグループ会社があります。特に証券業務や信託業務の利益が大きい点がMUFGの強みだと言えます。

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出典:MUFG2019年度決算ハイライト

 

一方、SMFGは次のような図を開示しています。利益貢献の大きなグループ会社として、SMBCコンシューマファイナンス(SMBCCF)や三井住友カード(SMCC)、SMBC日興証券や、持分法適用会社ではありますが三井住友ファイナンス&リースSMFL)があります。ただ、MUFGと比較すると、証券業務や信託業務で大きく見劣りしています。

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出典:SMFG2019年度実績の概要

 

最後にみずほFGですが、主要グループ会社の当期純利益が開示されていますが、銀行本体以外は他のグループと比べるといずれも小粒だと言えます。

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出典:みずほFG2019年度決算の概要

 

 

 

 

 

リスク管理債権及び与信関係費用

3グループのリスク管理債権及については次のようになっています。貸出残高に占めるリスク管理債権の比率はいずれのグループも1%未満となっています。3グループの中ではSMFGがその比率が最も低くなっていて、やや意外でした。

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また、与信関係費用は次のようになっています。いずれのグループも前年と比べて増えています。MUFGは、前年は貸倒引当金の戻入が大きかったため、その反動で大きく増えています。また、みずほFGは当期の与信関係費用のうち804億円は「フォワード・ルッキングに引当計上」したと説明しています。

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2021年3月期計画

2021年3月期については、3グループとも連結業務純益は減益、与信関係費用は増加すると想定しています。新型コロナウイルスの影響により、世界各国で金融緩和に伴い金利低下が進むことや、景気悪化により与信関係費用が増加することを想定しています。なお、MUFGは2020年3月期に大きな減損損失を計上したため、2021年3月期は純利益では増益を計画しています。みずほFGの与信関係費用が他の2グループと比較して少ないようにも見えますが、既に前倒しで引当計上している影響なのかもしれません。それにしても、連結業務純益MUFGSMFGとみずほFGとの格差は大きいですね。

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配当金及び配当政策

配当金については3グループとも現状維持としています。そのため配当性向が60%前後と高い水準になっています。

配当政策について、各グループは次のように表明しています。

MUFG:「利益成長を通じた1株当たり配当金の安定的・持続的な増加を基本方針とし、配当性向は40%をめざす→2023年度までに配当性向40%への引き上げをめざす」(当社ウエブサイト)

 

SMFG:「配当は累進的とし、配当性向は本中期経営計画期間中に 40% を目指す」(当社「2019年度実績の概要」)

 

みずほFG:当面は現状の配当水準を維持しつつ、資本基盤の一層の強化を進め早期の株主還元拡充を目指す」(当社「2019年度決算の概要」)

 

MUFGSMFGは配当性向40%を目標としつつ、特殊要因等で減益となった場合も配当を維持しようとしている姿勢が伺えます。特にSMFGは累進配当を掲げていますので、より強いコミットをしています。一方、みずほFGはかなり抽象的な表現です。おそらく横並びで配当を維持しようとするでしょうが、やや不安に感じます。

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自己資本比率

銀行の財務健全性を測る上で最も一般的な指標が自己資本比率です。銀行の場合、バランスシート上の自己資本を総資産で割るような単純な基準ではなく、資本についてはその質によって様々な定義があり、資産についてはオンバランス、オフバランスを含めてリスクに応じてウエイト付けして計算しています。最新の自己資本規制であるバーゼルⅢでは、普通株式等Tier1比率は4.5%以上(ただし資本保全バッファーを含めると7.0%以上)、総自己資本比率は8.0%、レバレッジ比率は3.0%以上とされています。いずれのグループも基準をクリアしていますので特に問題はありませんが、SMFGが最も高いのは意外でした。

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株価の状況

3グループの6カ月間の株価の推移を比較すると、3グループともほぼ平行して推移していますが、6月前の株価に対してMUFGとみずほはほぼ同水準であるのに対して、SMFGはややアンダーパフォームしています。

【6か月間の株価推移比較】

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また、5月15日の終値での配当利回りは次のようになっています。SMFGはもともと配当利回りや他の2グループよりやや高めでしたが、5月15日の引け後に増配を発表したため他の2グループより配当利回りがかなり高くなっています。ただ、週明けにはこの差が多少修正されるかもしれません。

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むすび

5月15日に3メガバンクグループの決算が一斉に発表され、開示された資料の一部ですが比較して紹介しました。

純利益ではSMFGがトップとなったものの、それはMUFGが海外子会社の減損処理で大きな損失を計上しただけであり、実態としてはMUFGの収益ナンバーワンのポジションは変わっていません。また、MUFGは海外事業や証券業務、信託業務も強くバランスのとれた事業展開をしているのに対して、SMFGは銀行本体に加えてカード事業やリース事業の強みはあるものの、証券業務や信託業務で大きく出遅れています。一方、みずほFGについては気が付けば他の2グループに大きく差を付けられてしまっています。

これはあくまで3グループの比較ですが、そもそも伝統的な銀行業務は時代遅れとなっていますし、国際的に見れば中国の銀行が存在感を増しています。大局的な観点から見れば、現時点での国内3グループの比較に大した意味はなく、それぞれの今後の戦略が問われてくるでしょう。

 

なお、この記事はあくまで僕の個人的な見解を示したものなので、投資判断はくれぐれも自己責任でお願いします。