たむたむの配当金生活への道

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日本郵政は一体どうしたのか?=2021年3月期の配当予想の謎=

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日本郵政グループ(6178)は515日に20203月期決算を発表しました。私は3月中に売却していたので特に注目をしていなかったのですが、518日に株価が急落したのを見て気になったので決算を見て驚いたのが、20213月期の配当予想を未定としていたことです。そこで決算資料からわかる範囲でなぜどうなったのか考えてみました。

損益及び配当の概要

20203月期は、経常収益は前期比▲6.5%、親会社株式に帰属する当期純利益が前期比+1.9%と、減収増益となりました。かんぽ生命の不正販売が大きな問題となりましたが、決算の数字上は問題ないように見えます。

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出典:日本郵政決算短信

 

また20213月期の連結業績予想は、経常収益が当期比▲5.5%、親会社株主に帰属する当期純利益が当期比▲42.1%と、減収減益を予想しています。かんぽ生命の問題もあるとは思いますが、ちょっと減益幅が大きいような気がします。

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出典:日本郵政決算短信

 

ここで問題なのが、配当金です。20203月期は予定通り期末配当を25円としましたが、20213月期の配当金予想は、第2四半期は無配とし、期末については未定としました。

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出典:日本郵政決算短信

 

この配当金予想を未定としたことは、かなり衝撃的でした。当社の株式を保有する場合、期待することは成長ではなく、安定配当だと思いますし、郵便局に親しみのある多くのお年寄りなどが配当金を期待して当社の株式を保有しているのではないかと思います。また、一番の大株主は日本国政府ですから、余程のことがない限り減配リスクはないと考えていました。

もちろんまだ減配と決まったわけではありませんが、業績予想でEPS69.25円とこれまでの年間配当金50円を超えているにもかかわらず、なぜ中間期を無配として期末を未定としたのか、決算短信だけを見てもちょっと理解できませんでした。

 

 

 

 

 

子会社の損益及び配当の概要

ここで、上場子会社であるゆうちょ銀行とかんぽ生命の20213月期の業績予想と配当の状況について見てみます。

 

ゆうちょ銀行

ゆうちょ銀行の20213月期の連結業績予想は親会社株主に帰属する当期純利益が当期比▲26.8%で予想EPS53.35円です。

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出典:ゆうちょ銀行決算短信

 

また、配当金は20203月期は年間配当金が50円でしたが、20213月期は日本郵政と同様に第2四半期は無配、期末は未定としています。

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出典:ゆうちょ銀行決算短信

 

かんぽ生命

かんぽ生命の20213月期の連結業績予想は、親会社株主に帰属する当期純利益が当期比▲17.7%で予想EPS220.48円です。

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出典:かんぽ生命決算短信

 

また、配当金は20203月期が中間、期末で各38円で、年間配当金76円でしたが、20213月期は第2四半期は無配としながらも期末配当金を76円としています。つまり、かんぽ生命の不正販売問題やコロナの影響はかんぽ生命の配当金には影響しないようです。

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出典:かんぽ生命決算短信

 

このように見ると、ゆうちょ銀行もかんぽ生命も減益を予想していますが、減益幅を見ると日本郵政より小さいことがわかります。ということは、日本郵便の減益幅が大きいだろうと言えます。

実際に日本郵政の決算説明資料によれば、日本郵便20213月期の親会社株主に帰属する当期純利益0円(当期比▲871億円)予想しています。

減益の理由はかんぽ生命からの手数料収入や郵便物の減少が大きいとしていますが、まあそれは理解できるでしょう。

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出典:日本郵政20203月期決算の概要」

 

 

 

 

 

問題は包括利益か?

普段はあまり意識されませんが、実は日本郵政20203月期の包括利益22,251億円の赤字となっています。包括利益とは当期純利益にその他の包括利益を加えたものですが、その他の包括利益とは簡単に言えば評価損益です。包括利益計算書を見ると、その他有価証券評価差額金として24813億円の赤字が計上されています。

日本郵政連結包括利益計算書】

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出典:日本郵政決算短信

 

この巨額のその他有価証券評価差額金がどこから来たのかと言えば、それはゆうちょ銀行です。ゆうちょ銀行の連結包括利益計算書を見ると、その他有価証券評価差額金として、21833億円が計上されています。これらは直接損益に与えるものではありませんが、それだけ保有している有価証券の価値が減少していることになりますので、心配ではあります。

【ゆうちょ銀行連結包括利益計算書】

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出典:ゆうちょ銀行決算短信

 

ゆうちょ銀行の運用状況を見ますと、満期保有目的の債券以外の資産の運用状況は次のようになっています。

これを見ると、有価証券のうち投資信託2404億円の含み損が発生しています。この投資信託の投資対象は主として外国債券だと説明されていますが、なぜここまで含み損が大きくなっているのか気になります。

ちなみに第3四半期では評価損益は5,978億円の含み益でした。つまりコロナショックの影響で第4四半期だけで含み損が大きく膨らんだと考えられます。

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出典:ゆうちょ銀行決算説明資料

 

このように見ると、ゆうちょ銀行の運用資産のうち投資信託のリスクが高そうだと言えます。ただ、投資信託の投資対象が主として外国債券と説明していますので、コロナショックで大きく評価を下げたものとして考えられるのはジャンク債のような信用リスクの高い債券でしょう。

ゆうちょ銀行の決算説明資料の中で、業績予想について次のような記述がありました。ここでは保有する投資信託からの分配金にのみ言及されていますが、クレジットスプレッドが高止まりすると、含み損が巨額なままとなるリスクがあります。

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出典: ゆうちょ銀行決算説明資料

 

 

 

 

 

むすび

あくまで決算で開示された資料からわかる範囲で考えてみましたが、日本郵政が今回配当予想を未定としたのは、ゆうちょ銀行が保有する有価証券中の投資信託の運用リスクが高く、損益にも大きな影響を及ぼしかねないということが主な理由だったのではないかと思います。

もちろん、開示された資料だけではこの含み損がいつどのようなかたちで純利益に影響を与えるのかはわかりませんが、含み損の規模を見ると純利益の数年分にもなりますので、かなりの規模だと言えます。

日本郵政単体で見れば、ゆうちょ銀行からの配当金収入がないと配当金の水準を維持できませんので、ゆうちょ銀行の利益の変動要因が大きい以上、未定とせざるを得なかったのではないでしょうか。

ただ、かんぽ生命は中間期は無配としながらも、期末一括で当期と同額の配当金を予想していますので、コロナが落ち着き経済が正常化に向かい、クレジットスプレッドが縮小していけば、ゆうちょ銀行、日本郵政はともに、期末に一括で50円配当ということはありうるかもしれません。これはあくまで推測ですが。

 

なお、この記事はあくまで僕の個人的な見解を示したものなので、投資判断はくれぐれも自己責任でお願いします。