制度の概要
日銀は量的緩和の一環としてETFと併せてJ-REITの買い入れを行っています。さらに、2020年3月16日の金融政策決定会合では、ETF及びJ-REITの買入額の上限を従来ペースの2倍にまで引き上げたことが話題になりました。
具体的な決定内容は同日付で日銀より公表された「新型感染症拡大の影響を踏まえた金融緩和の強化について」に記載されていますが、文言だけを見ると単純に2倍に引き上げられたというわけではなさそうです。基本的には従来通りのペースで、ただ最大2倍にまで柔軟性を持たせたという表現の方が妥当ではないでしょうか。
出典:日本銀行「新型感染症拡大の影響を踏まえた金融緩和の強化について」
買入対象
日銀による買い入れ対象は「指数連動型上場投資信託受益権等買入等基本要領」の中で、次のように定められています。
【指数連動型上場投資信託受益権等買入等基本要領】
また、適格担保取扱基本要領には、J-REITに関して次のように定められています。
【適格担保取扱基本要領】
つまり、日銀の買い入れ対象となるJ-REITは簡単に言えば、格付がAA格以上で、年間売買金額が200億円以上ということになります。
日銀による買入実績
日銀の2020年5月31日時点のバランスシートを見ると、J-REITの残高は6,031億円です。JAPAN REIT.COMによると、6月4日時点の全REIT時価総額合計が13兆2799億円なので、日銀のシェアは約4.5%になります。
出典:日本銀行ウェブサイト
また、コロナショック後のJ-REITの買い入れ額は次のようになっています。金融政策決定会合から1日当たりの買い入れ額が急増し、4月に入ってからまた現象しているのがわかります。さらに月間買入額は、2月は48億円だったのに対して、3月は315億円に急増し、 4月は200億円、5月は95億円と、株価の上昇に伴って買入額が減少しています。
出典:日本銀行オペレーション公表データより管理者作成
買入銘柄
買入対象銘柄に関する基準は先ほどご紹介しましたが、具体的な買入銘柄については大量保有報告書からある程度知ることができます。大量保有報告書は、5%超を取得したときに提出し、その後1%以上の増減が生じた場合に変更報告書を提出するルールになっています。そこでEDINETで検索することで、その範囲での日銀の取得状況を知ることができます。
出典:EDINETウェブサイト
その結果をまとめたのが下の表です。私が保有している銘柄は利回り重視で選んでいるため日銀買入の対象となる銘柄はほとんどありませんが、唯一対象となっているフロンティア(8964)は、平成28年5月19日に大量保有報告書が提出されてから増加した形跡がないため、何らかの理由で今は買入対象から外れているように思われます。
また、同じく私の保有銘柄である日本リテールファンド(8953)は、R&IからAA-の格付を取得していますし、時価総額もここにある銘柄と遜色ありませんが、なぜかここには挙がってきていません。
出典:EDINETより管理者作成
むすび
日銀によるJ-REITの買い入れは、ETFと同様に現在のところ出口が全く見えません。コロナショック時には買い入れ速度が加速しましたが、株価が回復した現在は巡航速度に戻りつつあるようです。とはいえ、銘柄によっては9%以上も日銀が保有する状況はかなり異常と言えます。いつかは出口を意識しなければならないと思いますが、当面は大丈夫だろうと思っています。
日銀の買入対象はどれもピカピカな銘柄であるが故に分配金利回りが低く、私の投資対象にはなかなかなりませんが、しばらくは日銀がJ-REIT市場を下支えしてくれそうなので、その恩恵は間接的にですが受けていきたいと思っています。
なお、この記事はあくまで僕の個人的な見解を示したものなので、投資判断はくれぐれも自己責任でお願いします。