夢真HD(2362)の2020年9月期決算が11月13日に発表されました。
損益の概要
売上収益は前期比+11.7%、親会社の所有者に帰属する当期利益は前期比+20.6%と増収増益となりました。
出典:当社決算短信
ただし、直近の業績予想では、売上収益が58,000~60,000百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益が3,700~4,200百万円だったのに対して、売上収益はレンジの中に入ったものの、親会社の所有者に帰属する当期利益は未達でした。
出典:当社2020年9月期第3四半期決算短信
*表中の売上高は売上収益、営業収益は営業利益の誤り
また、当社は今回の開示からIFRSへ変更しています。そのため、第3四半期の数字との差し引きで計算した第4四半期単独の数字は、必ずしも実態を表していない点には注意が必要ですが、売上収益が前年同期対比マイナスとなっています。
出典:株探
日本基準からIFRSに変更すると、通常ののれん償却がなくなる一方で、投資先の業績が悪化した場合は減損処理する必要があります。当社によればIFRS適用により日本基準に対して、のれん償却停止で+431百万円となった一方で、ベトナム関連会社の減損で▲339百万円、フィリピン子会社の減損で▲434百万円となっています。
なお、IFRSベースの前期実績との比較は次のようになっています。
出典:当社決算説明資料
セグメント別情報
セグメントP/Lによれば、営業収益は建設技術者派遣事業が前期比+5.7%であるのに対してエンジニア派遣事業が前期比+21.5%と大きく伸びています。一方、エンジニア派遣事業のセグメント利益は増減率では前期に対して大きくの伸びているものの、業績予想に対してはほぼ下限値で、物足りない結果となりました。
出典:当社決算説明資料
両事業とも、コロナ禍にありながら人員稼働率は大きく低下することなく維持していますが、その背景には採用を抑制したことがありますので、来期以降の成長が鈍化する恐れがあります。
出典:当社決算説明資料
一方、稼働率は若干低下したものの、派遣単価は上昇しています。
出典:当社決算説明資料
さらに、採用費を抑制することで販管費を圧縮しています。
出典:当社決算説明資料
コロナ禍にあって、人員稼働率を維持し、経費を抑制するためには採用を抑制することは合理的だとは思いますが、人材派遣業の場合は在籍人員数の伸びが抑えられると来期以降の成長率の低下につながるおそれがあります。
業績予想
2021年9月期の業績予想は、売上収益が当期比+4.0%、親会社の所有者に帰属する当期利益は当期比+6.8%と成長の伸びが鈍化する予想となっています。
出典:当社決算短信
また、同時に当社は中期経営計画を発表していますが、2025年9月期には売上高がほぼ倍増する意欲的な計画となっています。
出典:当社決算説明資料
ただし、この計画によれば2021年9月期の建設技術者派遣事業は、当期に対してほぼ横ばいとなっています。
当社の強みは未経験者を育成することで人材を確保している点であり、今後益々エンジニアに対する需要が高まる中で、特にエンジニア派遣事業において高い成長率を目指しています。
株価の状況
コロナショック前の株価は900円前後で推移していましたが、コロナショックで一時500円を割り込むところまで低下したものの、その後は緩やかに回復して、11月13日の終値は767円でした。
予想EPSが50.39円、配当金が35円なので、PERは15.22倍、配当利回りは4.56%です。当社はその成長性の割には株価が過小評価されてきたと思いますが、今の水準は割安ではないかと思います。
むすび
当期の決算は業績予想に対して未達で、来期の業績予想でも成長が鈍化する点ではやや物足りない決算でした。あとは同時に発表された意欲的な中期経営計画をどう評価するかということになります。
当社は2015年9月期の売上高は211億円しかありませんでしたので、この5年間で売上高を大きく伸ばしてきました。さらに、建設技術者派遣中心の事業内容からエンジニア派遣事業を育ててきていますので、やるべきことをやってきているとは思うのですが、どうもマーケットでの評価が低いように感じます。
成長性がありながら万年割安株のまま放置されるリスクはありますが、成長シナリオが崩れない限り、長期目線で保有し続けたいと思います。
なお、この記事はあくまで私の個人的な見解を示したものなので、投資判断はくれぐれも自己責任でお願いします。