JTの2020年12月期第3四半期決算が10月30日に発表されました。
損益の概要
売上収益は前年同期比▲2.5%、親会社の所有者に帰属する四半期利益は前年同期比▲18.4%と減収減益となりました。
出典:当社決算短信
第3四半期単独で見ると、売上収益は前年同期比▲2.3%、四半期利益は▲4.7%と前年からのマイナス幅を縮小していると言えます。
出典:株探
また、当社は業績予想を上方修正しました。海外たばこ事業が堅調であることに加えてJTビル売却益が第4四半期に計上されることを織り込んでいます。
出典:当社決算短信
財務会計ベースの数字とは別に当社が成長性の指標としている為替一定ベースの調整後営業利益は前年同期比+6.3%と増益となっており、事業の実力としては緩やかな成長が続いています。
出典:当社決算短信
セグメント情報
国内たばこ事業
RMCは数量で前年同期比▲5.9%でシェアを0.7ppt落としています。国内需要が減少する中で、シェアも若干落としています。一方RRPは、まだ市場が小さいながらも少しずつ増やしている状況です。
出典:当社決算説明資料
その結果、自社たばこ製品売上収益は前年同期比▲9.4%、調整後営業利益も前年同期比▲16.0%と大幅な減収減益となっています。
出典:当社決算説明資料
海外たばこ事業
海外たばこ事業は総販売数量が減少したもののGFB(Global Flagship Brands)販売数量は増加しています。UK、フランス、台湾等の高単価市場で渡航制限によって国内需要が増加ため販売数量を押し上げました。
出典:当社決算説明資料
この結果、為替のマイナス影響はあったものの、自社たばこ製品売上収益は前年同期比+1.6%、調整後営業利益は前年同期比+6.2%と増収増益となり、為替の影響を除いた為替一定ベース調整後営業利益は前年同期比+19.0%と大幅な増益となりました。
出典:当社決算説明資料
このように海外たばこ事業が増収増益となる一方で、国内たばこ事業がジリ貧となっていますが、これはあくまで第3四半期累計の話であって、第3四半期単独では少し様相が違ってきます。つまり、第3四半期単独では、海外たばこ事業は前年同期比で減収減益となっており、国内たばこ事業はセグメント損益が前年同期比プラスとなっています。
むすび
多くの日本企業は四半期決算の発表時に累計しか発表しませんので、四半期毎の業績の推移が分かりにくくなっています。当社についても、第3四半期累計と第3四半期単独とでは受ける印象が違ってきます。
とは言え、通期予想を上方修正したことはポジティブですし、配当金の支払いに対する不安も後退したと思いますので、全体としては良かったと思います。
しかし、国内たばこ事業はジリ貧ですし、海外たばこ事業は当面は成長が期待できるものの、新興国通貨は依然として弱く、財務会計ベースでの成長は当面難しそうです。海外たばこ事業が好調でキャッシュフローが潤沢なうちに新たな事業の柱を育ててほしいと思います。
なお、この記事はあくまで私の個人的な見解を示したものなので、投資判断はくれぐれも自己責任でお願いします。