米国株投資をすると、配当金について、現地で源泉税が10%差し引かれ、さらに日本国内で約20%の源泉税を差し引かれるので、高配当株投資をする上で、米国株は不利だと言われます。
そこで実際どのような計算がされているのか調べてみました。
目次
1.現地源泉税控除後の配当金収入
まず、下の図が先日入金されたエイリス・キャピタル(ARCC)の配当金明細書です。
1株当たり配当金が0.40ドル、権利日時点の株数が4,800株なので、税込配当金収入は1,920ドルとなります。
そこから現地で10%の源泉税を引かれますので、現地から得られる税引後配当収入は1,728ドルとなります。
2.国内源泉税の計算
ここまでは米国内の話ですので、通貨は米ドル建てでしたが、日本での源泉税の計算は円建てですので、税額計算用為替単価107.83円/ドルを使います。
円建ての現地源泉税控除後で、日本での源泉税控除前の配当金収入は、
1,728ドル×107.83円/ドル=186,330円
となります(円未満端数切捨て)。
さらに、日本国内の源泉税率は復興特別所得税を含めて20.315%ですので、国内源泉税額は、
186,330円×20.315%=37,852円
となります(円未満切り捨て)
3.米ドル建て源泉税控除後の配当金収入
明細書の国内源泉税の表示は1本になっていますが、厳密には国税(所得税)と住民税に分かれます。
所得税:186,330円×15.315%=28,536円
住民税:186,330円×5%=9,316円
となります(円未満切り捨て)。
これを米ドル建てに変換すると、
所得税:28,536円÷107.83円/ドル=264.63ドル
住民税:9,316円÷107.83円/ドル=86.39ドル
となります(セント未満切り捨て)。
この結果、全ての源泉税控除後のドル建て配当金収入は、
1,728ドル-(264.83ドル+86.39ドル)=1,376.78ドル
これで明細書の「お受取金額」に一致しました。
4.外国税額控除
外国で源泉徴収された税金は、確定申告で外国税額控除を使うことで取り戻すことができます。
ここで、取り戻すことができるのは、外国で源泉徴収された税金のうち、控除限度額までの金額になることに注意が必要です。
控除限度額は次のように計算されます。
控除限度額
=その年分の所得税の額×(その年分の国外所得金額/その年分の所得総額)
これだとわかりにくいですが、簡単に言えば
控除限度額=国外所得金額×所得税の平均税率
となります。
米国株の場合、総所得の10%以上に相当する所得税を払っていないと、外国源泉税の全額を取り戻すことができないので注意が必要です(3年以内の繰越控除はありますが)。
つまり、リタイアして配当金収入しかない場合は外国税額控除を使うことはできなくなってしまいます。
5.米国株は税金で有利!?
外国税額控除を全額適用できた場合、日本株より米国株の方が有利だと言えます。
先程のエイリス・キャピタルの例で言えば、円建てで税込配当収入は207,033円でしたが、国内源泉税は37,852円でした。
これにより、実際の税率は
37,852円÷207,033円=18.28%
となります。
配当金の源泉税率は20.315%ですから、税率が少し低くなっています。
というわけで、外国税額控除が適用できる(=一定の給与所得等がある)場合は、米国株の高配当投資は源泉税の観点からは日本株よりむしろ有利だと言えるでしょう。