高配当株投資では減配はダブルパンチ
高配当株投資は、キャピタルゲインをあまり期待せず、インカムゲインを確実に得ることを目的とする投資法です。
一般的に高配当株は、株価が下がると配当利回りが高くなるため買いが入りやすいため、相対的に値動きが穏やかだと言われています。
しかし、減配となるとこの株価の下支えを失ってしまうため株価は大きく下落しますし、インガムゲインも減ってしまうため、ダブルパンチとなります。
そのため、高配当株投資で重要なのは、いかに減配リスクを避けるかということになります。
企業を経営していれば、常に売上、利益が右肩上がりということはあり得ません。時には業績が悪化することもありますし、だからといってその企業がダメかというとそういうわけではありません。
株式市場では、短期的な業績の変動が株価に反映されてしまいますが、本来であれば長期的な視点でその企業を評価し、一時的に悪くてもじっと我慢することも必要でしょう。
そうしたときに、安定的な配当を続けてくれれば、配当収入を再投資しながらじっと耐えることができます。
そこで、減配リスクの低い高配当株を探すうえでのポイントを纏めてみました。
減配リスクの低い高配当株の特徴
長期非減配銘柄
長期にわたって増配してきた、あるいは減配してこなかった銘柄は、今後も減配するリスクは低いと考えられます。ここで長期という場合に、その期間が問題になりますが、目安としてはリーマンショック前から見るのが妥当でしょう。
過去の実績が未来を保証するわけではありませんが、相当長期にわたって減配していない銘柄は、よほどの経営危機に直面しない限り、経営者は減配の決断はしにくいのではないかと思います。
この場合、注意するポイントは配当性向ではなく利益剰余金の額です。配当性向が高くでも、場合によってはタコ配当となっても、利益剰余金に余裕があれば高配当を維持するでしょう。
日本たばこ産業(2914)やキヤノン(7751)はこの代表的な銘柄です。
累進配当方針や配当金の下限値を公表している銘柄
配当方針として累進配当を掲げている銘柄や中期経営計画の中で配当金の下限値を公表している銘柄は、数年単位で見れば減配リスクは低いと考えられます。
経営者としては、できるだけ宣言したことを守ろうとしますから、たとえ一時的に利益が予想を下回っても、それが構造的な要因でなければ、配当を維持しようとするでしょう。
この場合も、注目すべき指標は配当性向より利益剰余金の額だと思います。
僕の保有銘柄では、出光興産(5019)、三菱商事(8058)、三井住友FG(8316)などがこれに該当します。
出光興産「中期経営計画」より
三菱商事「中期経営計画2021」より
三井住友FG「中期経営計画」より
株主が国や投資会社である銘柄
例えば、日本たばこ産業(2914)や日本郵政(6178)、日本電信電話(9432)は、主要株主が財務大臣(=日本国政府)であり、配当収入も財政予算に組み込まれていますので、簡単には減配できないと考えられます。
また、株主が財務大臣ではありませんが、ソフトバンク(9434)は、配当金が投資会社である親会社のソフトバンクG(9984)の重要な収益源となっているため、減配しにくいと考えられます。
ここで挙げた特徴も、配当金を維持できるだけの利益剰余金があるとか、事業が安定していることが前提となります。
いわゆるディフェンシブ銘柄
利益が安定していれば安定的な配当をすることができますので、景気変動の影響を受けにくいディフェンシブ銘柄は相対的に安心して投資ができます。
ただ、一般的にディフェンシブ銘柄と呼ばれる業種には、食品や医薬品、電力、ガス、鉄道、通信、一部の内需型サービスなどがありますが、基本的に食品は回答利回りが低い傾向にあり、電力は原発事故以来リスクが高く、コロナで鉄道も不安だなどと考えると、高配当で安心して長期保有が出来そうな業種は医薬品と通信くらいではないでしょうか。
やっぱり大型株は安心!?
株式市場が過熱しているときは配当利回りが全体的に下がるため、銘柄を分散しながら、より高い利回りを求めて小型株にも手を出しましたが、今のような異常な状況になると、小型株は経営基盤が弱く、企業の継続性そのものが心配なので、誰もが知っている大型株にシフトしました。
配当性向が低ければ減配リスクは低いか?
一般的には減配リスクの程度を判断する際に、配当性向を基準に考えることがあります。例えば配当性向が30%であれば余裕があるため減配リスクが低く、配当性向が80%であれば余裕がないため少しでも減益となれば配当金も減るだろうということです。
しかし、僕の経験からは配当性向を基準にした考え方はあまり信用できないと感じています。
利益が減少した場合の企業の配当に対する行動は、
①配当性向にかかわらず配当金を維持しようとする
②配当性向を維持して利益が減少した分だけ減配する
③①と②の中間で、利益の変動に対して配当金の変動を小さくしようとする、
の3つのパターンに分けられます。
そして、配当性向が減配リスクを測る上で意味を持ってくるのは③の場合だけです。
例えば、住友商事(8053)は、2019年11月1日に発表した「2020年3月期連結決算予想及び配当予想の修正に関するお知らせ」の中で、基本的1株当たり当期利益の予想を272.30円から240.22円へ引き下げ、同時に年間配当金を90円から80円に引き下げました。
住友商事(8053) 2019年11月1日付「2020年3月期連結決算予想及び配当予想の修正
に関するお知らせ」より
これは典型的な②のパターンで、配当性向は修正後のEPSを基準に見ても十分低い水準でしたが、EPSの下方修正に連動して配当金も下方修正しています。
このように景気敏感株で利益の変動に連動して配当金を変える企業は、景気のいい時はこうした銘柄でも良いのですが、悪くなってくると減配リスクが高くなってきます。
このように、配当性向を基準に減配リスクを判断する場合は、その企業の配当方針や過去の配当実績を注意深く見ておく必要があります。
むすび
このように、高配当株投資をする上で、減配リスクが低い銘柄を選ぶ際のポイントをまとめてみました。
景気の先行きの明るいときは、株価が上昇し配当利回りが低くなるため、幅広い銘柄に投資してリスクを分散しつつ、増配の可能性の高い銘柄にも投資していくことも考えられますが、景気の先行きが不透明で、株価が下落して配当利回りが高くなる局面では、利益が減っても減配リスクの低い銘柄に集中してく方が失敗は少ないと考えています。
本日(4月21日)出光興産が業績予想の下方修正を発表して赤字決算となりましたが、配当金予想は維持しました。これが経営上健全かどうかは意見が分かれるところだと思いますが、高配当株投資においては、まずは減配しないことが重要だと思います。
なお、この記事はあくまで僕の個人的な見解を示したものなので、くれぐれも投資判断は自己責任でお願いします。
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