高配当株投資とは
高配当株投資とは、一言で言えば配当利回りの高い銘柄に投資することです。高配当株投資に対する批判としてよくあるのが、配当収入を得た時点で税金が引かれるので投資効率が悪いとか、配当利回りの高い企業はダメな企業だから株価が安く放置されていて配当利回りが高いのだとか、僅かの配当をもらってもそれ以上に株価が下がっては意味がないとか言ったものです。その一方で、安定的な配当収入が期待できる高配当株投資は、運用収益で生活するリタイア組だけでなく、資産形成途上の投資家の間でも一定の支持があります。そこで、高配当株投資について少し掘り下げて考えてみたいと思います。
高配当株投資の効果
高配当株投資に求める効果としては、主に次の2つが考えられます。
配当収入を再投資することで複利効果を出す
配当収入を生活費に充てるリタイア組を除き、高配当株投資の主たる目的は、配当収入を得てそれを再投資することで複利効果を出すことだと言えます。そのような目的に照らせば、短期的に株価が上がるか下がるかは大した問題ではなく、下がればむしろ配当金を再投資するときに安く買えるのでラッキーだという感覚になるでしょう。
数カ月単位での株価変動でいくら配当利回りが高くてもはるかに大きな含み損があるなら意味がないといった批判は、そもそも考えている時間軸が異なるため的はずれということになります。
株価の変動よりも重要なことは、長期にわたり安定した配当を支払う能力があるかという点にあります。株価というものは、上がることもあれば下がることもあります。しかし長期にわたって売るつもりがなければ、安定した配当収入があれば、債券のような感覚で保有することができ、しかも投資利回りが4%や5%、今ならそれ以上が期待できることになります。
配当収入を得ながら値上がりのチャンスを待つ
高配当株投資の副次的な効果として、私は配当収入を得ながら値上がりのチャンスを待つことも意識しています。つまり、配当収入がある限り株価が下がっても気にすることはありませんが、突然株価が上昇するようなことがあった場合には、その銘柄を売って別の銘柄に乗り換えてもいいという感覚で保有することとができます。配当収入で利回りを確保しつつ、株価の上昇でより大きな利益が確保できればそこで売ることができるというオプションを保有しているようなものだと言えるでしょう。
今の市場環境では高配当株の多くは指数よりもパフォーマンスが悪く、株価は低迷しています。それでも配当収入があれば焦らずに待つことができます。株価がダメでも配当金が変わらなければいいし、株価が上がればそれはそれでラッキーという気持ちで投資に臨めば、精神的にも楽ではないかと思います。
高配当株投資に適した銘柄
このように高配当株投資の効果を説明してきましたが、ここには重要な前提条件があります。それは、保有する銘柄が長期にわたって安定的に高水準の配当を払い続けることができるということです。
配当利回りが高いということはそれだけ株価が割安だということになりますので、そこには何らかの不人気な理由があります。そこで銘柄選択の際には高い配当利回りを見て飛びつくのではなく、なぜ株価が安いのか、市場の評価に対して自分はどう考えるのかを明らかにしておく必要があります。
ここで、私が考える高配当株投資に適した銘柄の条件を挙げてみます。
事業が安定していて長期にわたって減配リスクが極めて低い銘柄
参入障壁が高く、景気変動の受けにくい業種で、配当方針や過去の実績から長期にわたって減配リスクが極めて低いと考えられる銘柄です。日本たばこ産業(2914)は典型的な例になります。先日発表された2020年12月期第1四半期決算では、為替影響で減益とはなったものの、その影響を除けば実質的に増益となっていて事業の安定性を示してくれました。
景気敏感株ではあるが、安定配当に対するコミットが強い銘柄
事業の性質上景気変動の影響を強く受けるものの、配当方針として安定配当や累進配当、配当金の下限値などを示していて、それを実現できるだけの財務体力を持っている銘柄です。
総合商社の三菱商事(8058)やメガバンクの三井住友FG(8316)などが典型的な例です。また、配当方針は明確に示していないもののキヤノン(7751)も目先の業績に不安はあるものの過去の実績からこのカテゴリに該当すると言えるでしょう。こうした銘柄の場合、一時的には配当性向が異常に高くなることがありますが、そこは長期間で均して見る必要があると思います。
利益に応じて配当金が変動する可能性があるが、長期的には利益の成長が期待できる銘柄
新型コロナの影響で業績が悪化し、高配当株と言われていた銘柄の中でも減配となった銘柄が出てきています。この場合も減配となったから即座にダメな銘柄となるわけではなく、あくまで長期的な視点で判断するべきでしょう。三菱ケミカルHD(4188)や丸紅(8002)などは高配当株投資家にも人気のある銘柄で、今回の決算で減配となりましたが、長期的に見て事業の成長性をどう判断するかで対応が変わってくると思います。
高配当株投資の注意点
これまで高配当株投資の良い点と銘柄選択の大まかな考え方を説明してきましたが、 もちろん良い点ばかりではありません。どんなに慎重に銘柄選択をしたとしても、世の中絶対ということはなく、常に不測の事態が起こりうるリスクはあります。短期的な変動にとらわれず長期的な視点で判断しようとするために、判断の誤りが分かるのに時間がかかり手遅れになってしまうリスクもあります。そこで次のような点に注意すべきだと思います。
銘柄選択を慎重に行うこと
長期にわたって保有する前提で考える必要がありますので、配当利回りが高いからと言って反射的に飛びつくことは避けなければなりません。
少なくとも過去10年の業績推移や株価の位置、配当方針、業種等を見て判断する必要があります。そして、株価が低迷している場合、なぜ市場で評価されないのか、その評価と自分の判断はどこが異なるのかまで突き詰めていくと、後に前提条件が正しかったかどうかの判断がしやすくなります。
具体的な銘柄選択の手順と注意点についてはいずれ別の記事で触れたいと思いますが、3月に日本株の保有銘柄を絞り込んだ際に私がどのように考えてきたかは、こちらの記事で解説しています。
分散投資を心掛けること
どんなに情報を集めて慎重に分析したとしても将来のことはわかりません。そのためどんなに割安で配当利回りが高くても特定の銘柄に資金を集中させず、分散投資を心掛けた方がいいと思います。
その際には、単に銘柄を分散させるだけでなく、業種の分散は必須ですが、日本株だけでなく米国株を入れたり、J-REITやインフラファンドを取り入れたりと、資金規模とキャパシティに応じて投資対象を広げてみても良いと思います。
前提条件が崩れたのに固執しないこと
業績が悪化したり、減配したりしたときには、それが一時的な事象なのか、長期にわたって影響しそうなことなのかを見極める必要があります。そうは言ってもなかなか難しいところですので、少なくとも自分が考えていた前提条件が崩れたのかどうかは考える必要があるでしょう。
例えば、累進配当を宣言していた銘柄が減配を発表した場合であれば、私は即座にその銘柄を売ると思います。逆に景気敏感株で、配当方針を明確にしていない場合、業績が悪化して減配となってもまた回復の可能性があれば保有を継続することもあると思います。
減配となったときの対応の考え方についてはこちらの記事もご覧ください。
むすび
高配当株投資は、配当をもらい続けて再投資をしても良く、株価が上がれば売っても良く、株価が下がっても無視すれば良いと、うまくやれば非常に精神的な負担が少なく、資産形成にも効果的な投資手法だと思います。
万能な投資手法というものはなく、それぞれの手法に一長一短ありますし、人によって向き不向きもありますが、高配当株投資に対する批判的な意見の中には的外れなものを見られますので、私なりの理解を整理してみました。
高配当株投資にも当然リスクはありますが、リスクを低減するような工夫をすれば、メリットは大きいと思います。
なお、この記事はあくまで僕の個人的な見解を示したものなので、投資判断はくれぐれも自己責任でお願いします。