たむたむの配当金生活への道

草食系投資家のたむたむが、高配当株への投資で夢の配当金生活を目指します。

【銘柄分析】SHIFT(3697)

f:id:tamtam0824:20201025114747j:plain

SHIFTはこれまで急成長を続けてきましたが、10月22日に新株発行及び株式売出しを発表して、翌日株価が暴落しました。そこで私は買い増しましたが、果てしてそれが正しかったのか。この記事ではSHIFTについて詳しく見てみたいと思います。

 

事業内容

当社の事業はソフトウェアのテスト・品質保証サービスです。これまでゲームなどのデバッグを手掛ける会社は色々ありましたが、当社の特徴はエンタープライズ市場、すなわち、企業の業務システムや情報システムなどの開発をターゲットにサービスを提供してきた点にあります。

直近決算でのセグメント別売上高では、エンタープライズ市場が91%を占めています。

f:id:tamtam0824:20201025114815p:plain

さらに当社は、ソフトウェアのテスト業務を請け負うだけでなく、テスト業務で蓄積した知見に基づきソフトウェア品質向上のためのコンサルティングメニューを提供し、上流工程から開発を支援することを可能としています。

f:id:tamtam0824:20201025114839p:plain

出典:当社ウェブサイト

 

 

 

 

業績の推移

業績はきれいな右肩上がりで成長しています。2016年から2020年までの平均成長率は売上高が51.1%、当期純利益が52.2%と毎期50%の成長を続けてきました。

f:id:tamtam0824:20201025114921p:plain

 

当社は積極的なM&Aで業容を拡大してきていますが、成長をM&Aだけに依存しているわけではなく、オーガニックな成長を継続している点は評価できるでしょう。

f:id:tamtam0824:20201025114946p:plain

出典:当社決算説明会資料

 

ただ、高い成長率は評価できるものの、営業利益率が8.2%と決して高い水準ではない点は物足りなく感じます。過去から営業利益率の水準はほぼ横ばいですので、請負業務中心の業態では売上の増加に付随して利益率を上げていくのは難しいのかもしれません。

 

【2020年8月期決算】

f:id:tamtam0824:20201025115030p:plain

 

また2021年8月期の業績予想は、売上高が当期比+56.7%、当期純利益が当期比+27.4%と売上高は依然として高い伸びを予想していますが、利益面では、中間期は減益、通期でも売上高の伸びと比べると低い増加率に留まっています。

そのため、今後しばらくの間は決算発表の度に失望売りが出るかもしれません。利益率が低下することについて明確な言及はありませんが、積極的なM&Aでのれんの償却額が増加するなどで利益が圧迫されるのだろうと考えられます。

 

【2021年8月期業績予想】

f:id:tamtam0824:20201025115054p:plain

 

 

 

 

財務・キャッシュフロー

2020年8月期の自己資本比率は53.0%でまずまずといった水準です。2019年8月期にバランスシートが急拡大していますが、新株予約権の行使による増資によって、自己資本比率は50%を超えています。

f:id:tamtam0824:20201025115124p:plain

 

また、事業の成長に伴って営業キャッシュフローは増加していますが、積極的なM&Aで投資キャッシュフローはマイナス、直近ではフリーキャッシュフローもマイナスとなっています。当社は成長期にあり、投資資金をファイナンスできていますので、特に問題ないと考えます。

f:id:tamtam0824:20201025115150p:plain

 

 

 

 

株価の推移

5年チャートを見ると2018年3月から2019年4月頃まで株価はヨコヨコでしたが、底からは多少の上下はしながらも株価は大きく上昇してきました。ただし、今月に入って決算発表後に高値を付けてからは株価が急落しています。

f:id:tamtam0824:20201025115217p:plain

 

10月8日に2020年8月期決算を発表し、その翌日に高値の19,070円を付けた後、株価は下落に転じ、さらに10月22日に新株発行と株式売出しを発表して、その翌日には株価が10.88%も下落してしまいました。

f:id:tamtam0824:20201025115240p:plain

 

新株発行については、相応の対価が支払われ、その資金が財務基盤の強化や事業拡大のための運転資金として使用されることから、株数が増加することによる希薄化があったとしても、結果として企業価値が向上すれば納得できるものです。

一方、10月7日に行使されたストックオプションは株数が1,000,000株と、今回の新株発行よりも規模が大きくなっています。さらに行使価格が10円であるため、会社はほとんど何も得ることなく、株数だけが増えてしまい、既存株主にとっては新株発行以上にマイナスのインパクトがあります。

f:id:tamtam0824:20201025115305p:plain

出典:大量保有報告書の変更報告書

 

ストックオプションの内容については有価証券報告書で開示されていましたし、こうした新株予約権を考慮した潜在株式調整後EPSも開示されていますので、新たなニュースではないかもしれませんが、業績予想で開示されるEPSは潜在株式を考慮しませんので、かなりネガティブなインパクトがあったと思います。

新株発行と同時に発表された丹下大氏による530,000株の売出しは、ストックオプションの行使に伴う納税資金の確保を目的としているとリリースには書かれています。

 

f:id:tamtam0824:20201025115344p:plain

出典:当社リリース資料

 

ストックオプションの行使と新株発行によって、当社の発行済株式数は、2020年8月末の15,940,500株から17,640,500株に増加します。そのため、自己株式の数が同数であれば、業績予想で発表された予想EPS132.18円は119.41円に修正されることになります。

10月23日の株価は14,340円でしたので、予想PERは108.49倍から120.09倍に上昇します。ではこのPERが適正な水準なのかについては後ほど考えてみたいと思います。

 

 

 

当社の成長性

当社は売上高では創業来10期連続で1.5倍以上の成長を続けてきました。さらに2021年8月期においても+56.7%と成長ペースを維持しています。まずはこの実績が今後も高い成長性を期待する根拠となっています。

f:id:tamtam0824:20201025115428p:plain

出典:当社決算説明会資料

 

当社は戦略目標として「SHIFT1000」を掲げ、売上高1,000億円を当面の目標に設定して改革を推進しています。

f:id:tamtam0824:20201025115507p:plain

出典:当社決算説明会資料

 

これまでの成長ペースがしばらく維持できるとすると、売上高が1,000億円に達するのは2023年8月期になると予想されます。当社が掲げたロードマップによれば、売上高1,000億円のときにはエンジニア数が11,000人になっています。ただし、この水準に達するためには、エンジニアを確保しつつエンジニア一人当たりの売上高も伸ばしていく必要があります。

営業力の強化については、先日発表された役員人事で、元キーエンス社長の佐々木道夫氏が社外取締役から取締役副社長となって直接指導することとなりますので、期待はできそうです。

また、人材の確保については、採用力の強化もありますが、やはりM&Aによる事業規模そのものの拡大が重要になってくるでしょう。

事業規模が拡大してくると、これまでと同じペースで成長していくのは困難になってくると思いますし、M&Aのための資金需要が拡大すると、今後も増資による株式の希薄化は避けられないでしょう。したがって、売上高の成長ほどEPSは伸びないと考えた方が良さそうです。

このように今の事業の延長線で考えると、これまでの成長スピードを維持することは難しそうにも思えますので、後は経営者の手腕がそれだけ信頼できるかにかかってきます。創業者であり代表取締役社長の丹下大氏はまだ46歳と若く、2005年の設立以来、うまくM&Aを行いながら当社をここまで成長させてきた実績があります。そうした実績と若さから、今後はソフトウェアのテスト・品質保証サービスの枠に収まらず、大きな飛躍と遂げてくれるのではないかという期待感が持てます。

高成長企業を評価する場合、現在の延長線だけで将来像を捉えることができない点に難しさがあります。既存のビジネスを成長させるだけでなく、M&Aによって事業の軸足を移していきながら事業規模を拡大していくことも十分考えられるからです。したがって、企業を評価する場合、既存のビジネスを分析する以上に、経営者の手腕に対する信頼性がより重要な要素になるでしょう。そして信頼し続けられるかどうかは、決算の度に発表される数値と講じてきた施策、そしてビジョンとの整合性を定期的にチェックすることで検証することになるでしょう。

 

 

 

 

評価

ポジティブ
  • 10期連続で売上高が50%以上成長してきた実績があり、2021年8月期も売上高は56.7%の成長を見込んでいる。
  • DX化の推進という社会の流れの中で、当社の主力事業であるエンタープライズ市場向けのソフトウェアのテスト・品質保証サービスの需要は当面大きな拡大が期待できる。
  • 当社はM&Aを積極的に行いながら、戦略的に必要な技術要素を確保するとともに、グループに取り込むことで買収した会社も成長させている。

 

ネガティブ
  • 請負業務が主体であり、売上高が増えても利益率が劇的に向上することは期待できない。
  • 今回の新株発行だけでなく、ストックオプションの行使による株式の希薄化が大きい。
  • 事業規模が拡大したため、これから同じ成長スピードを維持していくためのハードルが上がっていく。

 

 

むすび

当社に対する評価は、成長性が維持されるかどうかにかかっており、それは財務的な数値ではなく経営者の手腕にかかっていると言えます。現在の希薄化考慮後のPER120倍という水準は高いという見方もあるとは思いますが、PERの成長率が毎期50%は無理としても30%の成長を維持すると考えれば、5年後の利益は約3.7倍になり、その時点のPERは32.4倍で合理的な水準と言えます。したがって、少なくとも5年間は30%以上の成長が期待でき、更にそれ以上長期にわたって成長が期待できると思えば、今の株価水準は十分正当化できますし、それはさすがに無理だろうと考えれば割高だという評価になるでしょう。

個人的には、少なくとも売上高1,000億円くらいまでは順調にいくだろうと想定しており、その間にその次の展望が見えてくると思っています。丹下社長にはどこかで大きなブレイクスルーを起こしてくれるのではという淡い期待を持ちつつ、今の成長スピードが維持される限り、当社に期待したいと思います。

 

なお、この記事はあくまで私の個人的な見解を示したものなので、投資判断はくれぐれも自己責任でお願いします。また、本記事で紹介した銘柄について、市場環境やポートフォリオ管理の観点から予告なく売却することがあります。